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移り気MAX

記憶障害なのか、ただの移り気なのか。明日忘れないために今残そう。テレビ。映画。音楽。特撮。マーケティング。メディア。

90年代から00年代にEMOを聞いてた大学生全員に聞かせたいsora tob sakana

2000年代前半から中盤にかけて大学生をしていて、なおかつバンドサークルに所属をしていたことがあって、音楽に一家言ある自分を演出する一環としてディスクユニオンのビニール袋に教科書を入れて大学に通っていた人間であれば、"EMO"という単語に見覚えがあるだろう。

ちなみにEMOはエモでなくイーモと読む。

 

EMOは音楽ジャンルである。割と捉えどころのないジャンルだと思うが、その名の通りエモーショナルなロック全般を指すと言っていいのだろう。Rites of SpringやFugaziといったハードコアを出自としながら、WEEZERやThe Getup Kidsといったポップシーンでも人気があるバンド、更にはAt the drive inのようなオルタナティブロックシーンとも親和性が高いバンドを含んでおり、当時の大学生が聞くジャンルとして非常に間口が広く、人気が高かった。

EMOは端的に青春であった。ディスクユニオンで旧譜を漁りiPodに入れて、バンド練習のスタジオにチャリで向かいながら爆音で聞く。これ以上郷愁を誘う風景は無いと断言できる。

EMOといえば、夏である。夏の、どこまで高く続く青空を前に、立ち尽くし絶望するボンクラ、それこそがEMOであると勝手に思い込んでいる節がある。Appleseed Castというバンドがいる。そのファーストアルバムのジャケットに描かれた少年の表情、それこそがEMOであると思い込んでいる節がある。

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なんとも言えない表情で唇を噛み締める。空は青く、高く、どこまでも道は続いている。何を言っているかはわからないが、これがEMOである。

前置きが長くなってしまった。EMOはこれ以上無い自らの青春であり、ここ10年はしかし、心のどこか奥にしまわれていたものだった。

 

しかしこの夏、その閉ざされた扉は突然、不用意にこじ開けられてしまった。sora tob sakanaだ。2014年に結成された、平均年齢13歳の少女達4人からなるアイドルグループである。

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え、これってあの頃必死こいて爆音で聴いてたEMOじゃん。

静謐な単音のギターから、不意に激しいドラムパターンに爆音のギターが被さってくる、おまけにピアノのリフまで絡みつく。少しひねくれたドラムパターンの上に少女達の拙い歌声。美メロである。

ここにはEMOの全てがある。いや、当時なかったものまである。スキンヘッドかロン毛のおっさんによる顰め面の歌が、眩い少女達のものに置き換わっている。そして、EMOバンドの代名詞、演奏の下手さが全く感じられない。むしろバカテクだ。流石はハイスイノナサプロデュース。

曲名が「夏の扉」である。これ以上EMOな曲名は無いと断言できる。

比較的初期のEMOバンドには欠点が1つある。アルバムを通しで聴くと、同じような曲ばかりなのだ。4曲も聴けば飽きてしまうこともしばしばだった。しかしこのsora tob sakana、その点は踏襲していない。

間違いなく本年最も重要なアルバムの一つであるセルフタイトルアルバム "sora tob sakana" (https://www.amazon.co.jp/sora-tob-sakana/dp/B01HI92L3O)は飽きさせない。

T1「海に纏わる言葉」はよくEMOバンドもアルバムで1曲目に据えるインストトラックである。そこからの自然な流れでT2「夏の扉」がある。ここまでの流れは前述のAppleseed Castの傑作2ndアルバムMare Vitalisを感じさせる。この時点で年間ベスト級であることは確定する。

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しかしT3「広告の街」は、1度ここまでの流れを裏切る。それはさながら、ポストロックバンドbattlesのインスト曲の上に、アクロバティックな美メロが載ったような曲なのだ。はっきり言って異次元の格好よさだ。ここまで感じていた耽美なEMO様式美は一度脆くも崩れ去る。この曲は本当に格好よすぎる。そしてふと我に返ったところにT4「夜空を全部」が再び夏の日の絶望を蘇らせる。しかしT5「魔法の言葉」はテクノ・エレクトロニカを基調とした浮遊感のあるトラックの楽曲であり、聞き手を再び立ち止まらせる効果を持つ。もちろん名曲である。そう、このアルバムはとかく単調になりがちなEMOアルバムの特性を慎重に回避している。耽美な懐古に行き過ぎない巧みさを持っている。その後の曲もはっきり言って素晴らしいバランスで素晴らしい楽曲を連発している。

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なんというか、ここまでおっさんホイホイなことを書いておいて大変恐縮だが、EMOが醸す"感覚"をここまで踏襲しながら、懐古にならない上に、昨今の、アイドルに特定のジャンルを歌わせてみました、という必然性のない企画には全くなっていないsora tob sakanaは最高だ、ということが言いたいためだけに書いたエントリでした。